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Ⅰ 



はじまり

何者にもなれない怒りは
自分の輪郭を貫き
理想とない交ぜの虚構にぶち当たり
火花を散らした
その刹那的な閃光は
夜を漂う生温い空気に触れ
誰にも邪魔されない
恒久的な空間を作り上げた
宇宙の始まりだった



境界線

午後の日差しは依然として
アンニュイな眼差しで
僕らを見下した
何処へ行っても境界線は
自己の存在を誇張するように
その内側も外側も蔑ろにする
輪郭だけが徒に鬩ぎ合って
お互いに重なった所にだけ影が落ちる
真っ黒な陰が落ちる
そこに僕らの居場所はあった
そこだけが僕らの居場所だった



名残

吐瀉物みたいな言葉は
誰に見遣られることもなく
誰かの心に響くこともなく
凍てつく早朝に白い空気の中
半ば凍りついて転がっていた
やがて朝日の赤が射し込むと
融解することもなく昇華した
しかしそこに残った黒い影みたいな染みは
向こう何百年消えることはなかった
ただそれだけが僕らの希望みたいに
何かの名残みたいに
そこに在り続けた




sage
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